3月, 2013

技術コラム第20回:SparqlEPCU/WebDocManager/LOD Browser

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SparqlEPCU」,「WebDocManager」,「LOD Browser」でアプリケーション部門最優秀賞を受賞された年岡晃一さんから、メッセージをいただきました。

 

Linked Open Data チャレンジ Japan 2012にてアプリケーション部門最優秀賞を頂きましたSparqlEPCU及び関連作品についてご紹介致します。

 

作り始めたきっかけ

RDFのデータ形式を使うとWebに上がっている世界中の様々なデータを2次利用出来るという道が開けます。しかしいざそういうアプリケーションを作ろうとするとRDFの格納やらSPARQL検索エンジンの呼出しやらで、初心者やプログラマー以外の人には敷居が高く感じられたり、それなりの時間や労力が必要となったりします。これらの問題を軽減するシステムを考えたいというのがきっかけです。

 

図1.SparqlEPCUサイト・トップページ

 

SparqlEPCUとは

Google Mapsでは地図データをクラウドから持ってきますが、それと同じ様にRDFデータをクラウドからデータを持って来ることを可能にするフレームワークです。クラウドのRDFサーバーとそこにアクセスするためのJavaScriptライブラリ及びサービス提供サイトから成ります。ライブラリAPIを呼び出すLODのアプリケーションは、RDFstoreの実装の手間が省け、分野に特化した処理やGUI作成に専念することが出来ます。Googleの地図データとは違って、RDF格納の機能も必要となるので簡単なアクセス権の制御も出来るようにしています。

 

以下の順に、理解のレベルに応じてLODアプリケーションの構築が出来ます。

先ずはプログラミング無しでLODを体感

  1. CSVデータを作成
  2. SparqlEPCUサイトのGUI画面からCSVデータをRDF登録
  3. SparqlEPCUサイトのGUI画面からSPARQL検索で登録RDFの確認
  4. LOD Browserを使ってLODアプリを体感

 

JavaScriptプログラミングでアプリ構築

  1. API呼出しのサンプルコードHTMLファイルダウンロード
  2. サンプルHTMLをダブルクリックして動作確認
  3. SparqlEPCUサイトで自分のプロジェクトを作成
  4. サイトにあるAPIチュートリアルで機能の詳細を確認
  5. JavaScriptコードを使って他データとマッシュアップし、アプリ構築

 

WebDocManagerLOD Browser は、上のステップ9で開発したアプリケーションです。図2のLOD Browser では、RDFデータに緯度・経度情報が含まれている場合、Google Maps上にその位置を表示します。

 

図2.LOD Browser

 

今後の展望

現在、RDFサーバーの実装部分はscale outにはなっていないので、PaaS (Platform as a Service) を使ってこれを解決して置きたいと考えています。またJavaScriptやマッシュアップは今後もICTやクラウドサービスの中核として使われていくと思われます。多くの方が、本フレームワークを使って様々なLODアプリケーションを作って頂けるよう工夫をして行きたいと思います。

 

来年度応募を考えている人へのメッセージ

LOD実現のために更なる様々な切り口のサービスや部品化のプラットフォーム作り、データのWeb作りなどが続々と作られ始めています。本システムがそういう中に参加していく足掛かりや参考になれば幸いです。

 

LODチャレンジへの期待

LODチャレンジは産官学から成るソフトウェア作りのコンソーシアムとして、ソフトウェア活動の新しいプラットフォームになるような気がします。ハッカソンやアイデアソンを通じて生まれる様々なビジネスモデルや新しい社会システムが日本の経済をきっと立て直して行くと信じます。

 

中部大学 年岡晃一

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3月 27th, 2013 at 12:56 pm

技術コラム第19回:depicts.azurewebsites.net

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depicts.azurewebsites.net」でデータセット部門最優秀賞を受賞された松澤有三さんから、メッセージをいただきました。

 

 

Linked Open Data チャレンジ Japan 2012 にてデータセット部門最優秀賞を受賞致しました depicts.azurewebsites.net についてご紹介致します。depicts.azurewebsites.net は既存の地理ポリゴンデータを Web や LOD にとって扱いやすい形に加工・配信することを目的としたプロジェクトです。

 

もともと GIS (地理情報システム) の分野ではデスクトップアプリケーションでの利用を前提としたデータ配信がさかんに行われているのですが、 Web や LODの観点からは扱いが難しいという問題がありました。このようなデータを LOD的に使いやすくするにはどうしたらいいだろうか?ということで試行錯誤したのですが、「可視化の可能性・容易性」「リンクの工夫」等を評価いただき、たいへん嬉しく思っています。

 

当初は「GeoNames に対応するポリゴンデータセットを作ったら使ってもらえるのでは?」という軽い気持ちでスタートしたのですが、作業を進めていく中で異分野のデータを連携させる困難さや ISO や JIS のような標準コードのありがたさに気づかされるなど、予想以上に充実した日々を送ることができました。最終的にデータセット部門に応募、皆様からのコメントやアイデアをいただくことができ、大変励みになりました。

 

 

データセット部門最優秀賞に選んでいただいたにもかかわらず恐縮なのですが、depicts.azurewebsites.net はまだまだ発展途上です。サイトの体裁を整えたり、データの整備範囲を拡大したり、アプリや可視化のために使いやすくなる方法を模索したり、ドキュメントを整理したりなどなど、やるべきことがたくさんあります。また、Linked Open Data チャレンジのデータセットの中にも、ポリゴンデータを使って可視化してみたいものがたくさんあります。

 

今後も続けてデータセットやアプリを公開していくことで、LOD の普及促進にわずかでも貢献できればと思っています。そして、来るべき LOD チャレンジ 2013でこのデータセットを使った作品に出会えることを期待しています。

 

松澤有三

Written by lod-committee

3月 26th, 2013 at 9:44 am

技術コラム第18回:東日本大震災アーカイブ

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東日本大震災アーカイブ」でビジュアライゼーション部門最優秀賞を受賞された渡邉英徳さんから、メッセージをいただきました。

 

 

■多元的デジタルアーカイブズ・シリーズ

私たちはこれまでに、散逸していく歴史資料を収集し、デジタル・アース上の仮想空間に集積して公開する「多元的デジタルアーカイブズ」を構築してきました。これらの目的は、非公開資料をオープンデータ化し、資料間の時空間的な関連性を提示することによって、事象についての多面的な理解を促すことです。

 

第一作「ツバル・ビジュアライゼーション・プロジェクト」の制作は、ツバルの写真家、遠藤秀一氏との出会いがきっかけでした。さらに長崎出身の被爆三世、鳥巣智行さん・大瀬良亮さんからのオファーで「ナガサキ・アーカイブ」が制作されました。その後「ヒロシマ・アーカイブ」「沖縄平和学習アーカイブ」と、一連のアーカイブズ・シリーズが制作されてきました。

 

■記憶のコミュニティ

デジタル技術だけではアーカイブズを構築できませんでした。資料の利用については、収蔵施設の許可を受けなければなりません。証言については、新規にインタビューを行なうとともに、ウェブ公開許諾を得る必要があります。何よりも、制作活動を進めるための大前提として、地元の理解を得なければなりませんでした。

 

そのために、高齢の証言者と学生・生徒たちが手を取り合いながら記録保存活動を進める「記憶のコミュニティ」が形成されていきました。この「記憶のコミュニティ」は、過去のできごとを語り継ぐ人々を世代を越えて繋ぎながら、組織・施設の裡に閉ざされていた資料をオープンデータ化し、世界に向けて開くはたらきを担っています。

 

■東日本大震災後の活動と今後の展望

2011年3月11日の東日本大震災発生後、私たちは応急的な支援コンテンツを多数リリースしました。これらのコンテンツを制作したクリエイターのコミュニティはオンラインで形成されました。LODチャレンジにてビジュアライゼーション部門最優秀賞を受賞した「東日本大震災アーカイブ」、そして「震災ビッグデータの可視化コンテンツ」も、ソーシャルメディア上のつながりが育んだものです。

 

ナガサキ・ヒロシマをはじめとする戦史のアーカイブズ・シリーズは、対面のコミュニケーションをベースとして構築されたものでした。それに対して、震災関連のプロジェクトにおけるオンラインのつながりは、私たちの時代に起きた災害についての活動ならではの、あらたな「記憶のコミュニティ」の在り方と言えます。

 

アーカイブズ・シリーズの構築において形成された「記憶のコミュニティ」は、社会的な柵を越えて資料をオープンデータ化し、未来に向かって継承するはたらきを持つと考えられます。しかし、そのちからが存分に発揮されるための要件ははっきりしていません。これを顕らかにし、未来の社会に向けて提案していくことが、筆者の次の仕事です。

 

首都大学東京 渡邉英徳

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3月 18th, 2013 at 6:08 pm

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